農民の確信を素早くかちえるために、恐怖心を利用する用意がありながら、活動家が「農民改革」の舞台装置をしつらえるための努力を払わねばならなかったのは、戦争中、人民解放軍に加わるくらいなら日本軍支配地域へ逃げるほうを選ぶ青年の数が多かったからでした。また、農民は常に無気力で新政権による小作料軽減後も、伝統的な小作料を地主に対して払い続けるほど地主に対して従順であり、社会的基盤にかんする共産党の理想に賛同するにはほど遠かったのでした。扇動者は農民をその政治的立場から、積極派、標準派、後進派、地主支持派に分類し、なんとかして公式の社会集団にこれらカテゴリーを当てはめようと苦労しました。その結果は、無数の個人的いさかいや願望にまで取り込まざるを得なくなり、怪奇な社会学に行き着くことになってしまいました。しかも、この分類はお好み通りに修正することができ、土地の再分配を手っ取り早く終わらせるために、張荘村当局は、95家族いたはずの貧農を28家族に減らしたのでした。共産党幹部は、ほとんどが特権階層出身だったにもかかわらず、民間人は概して「労働者」に分類され、兵士は「貧農」あるいは「下層中農」に分類されていました。
土地改革の鍵となったのは「訴苦会」でした。村人全員が集まったところで、一人あるいは複数の地主が出頭し、彼らは「裏切り者」と呼ばれました。(地主については日本占領軍の協力者と一体視されていました)昨日まで権勢ををほしいままにしていた人物を前にしてか事態が動き出すまでには時間がかかるため、その場合、活動家が被告人を手荒く扱ったり、侮辱するなどして力を貸すことが必要でした。そうすると一般に、地主に恨みをいだく人々から告発の発言が噴き出し、集会の熱気が高ぶっていきました。そうして、地主の死刑宣告にまで至るまで困難はなく、農民も多かれ少なかれ積極的に参加して、刑はその場で即座に執行されたのです。
各人がその役割を完璧に確信を持って演じきったとき、このホラー芝居は自己批判集会の起源となり、1976年の最高指導者の死まで、すべての中国人が休み無しに耐え忍ぶことになったのでした。こうしたお芝居こそ、中国の伝統的な儀礼主義と体制順応主義への根強い傾向を露にしたものであり、権力はこの傾向を心行くまで利用し濫用しえたのでした。
参考文献:共産主義黒書 コミンテルン・アジア編
第二部 アジアの共産主義ー「再教育」と虐殺のあいだ
第一章 中国
土地改革と都市での粛清(1946ー1957)
農村:従順化と社会工学
ナチズムの犠牲者約2500万人に対し、共産主義により殺された人数は1億人に近い。民族・人種によるジェノサイドとイデオロギーによるジェノサイドがどこが違うのか?
共産主義黒書 第一部はこちら Crescendo
農村:従順化と社会工学2
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このページは、倉橋正幸が2010年2月27日 00:00に書いたブログ記事です。
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